十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年12月号

特集/新店でめぐる2024年

Chai法律相談(191)「賃貸借契約に問題はないか?」

【質問】
 私は、自分が所有する建物を第三者に賃貸しています。この建物の借り主とは賃貸借契約書を交わしており、借り主が残置物を撤去せず行方不明になるような万が一の事態に備えて「契約終了後、借り主が建物内の所有物品を期限内に搬出しないとき、貸主は建物内に立ち入り、適当な措置を取ることができる」と定めています。このような契約条項に問題はありませんか。

【回答】
自力救済の禁止に反する条項は、無効になる可能性が高いです。

 賃貸借において、借り主が契約終了後に明け渡しをせず、家財道具を残置したまま行方がわからなくなるというケースがあります。このような場合、貸主としては「借り主が悪いのだから勝手に立ち入って片付けてよい」という発想になり得ます。しかし、借り主が承諾しておらず交渉もできていないのであれば、貸主は借り主に対して法的手続によって明け渡しを実現しなければなりません。法的手続によらず自ら明け渡しを実現しようとすることは自力救済として原則禁止されています。盗まれた物を自ら取り返すというように、個人の実力で権利を実現することを認めると、社会秩序を乱す危険性があります。やむを得ない事情がある場合、必要な範囲内の措置を取ることはできますが、極めて例外的に認められるものです。

 したがって、自力救済の禁止の趣旨に反する賃貸借契約書の条項は、無効であると判断される可能性が高いです。このような条項に基づき、法的手続を経ることなく貸主が賃貸物件に立入って借り主の物品を処分するなどの措置を取ることはできないと考えられます。

今回の回答にご協力いただいたのは
[渡辺紘生 弁護士]

事務所/帯広市西3条南10-15 雨宮ビル2階
Tel:0155・66・8650


※質問・回答はChai編集室の責任でまとめています。

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※フリーマガジン「Chai」2024年11月号より。